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あるまじろの読書日記

「なぜ、本を読むんだい?」「そこに本があるからさ!」興味のあるテーマは歴史とサイエンス。アラサー。関東在住。文章力が低く時折エラそうな書き方になりますが、どうかご容赦ください。( ̄ー ̄;

科学者は戦争で何をしたか

サイエンス 読書

              

ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英教授の著書。益川教授と言えば、ノーベル賞受賞時の感想を聞かれて「うれしくない!」と答えたユニークなキャラクターの印象しかなかったが、このような本も書かれていたことを初めて知った。

本書のテーマは「科学と社会の関係」だ。現代科学の世界は商業化が著しく、純粋な学問ではなくなってきていること、自分の専門研究にばかり熱中して、社会問題に無関心な科学者が増えてきていること、そして科学が戦争ための技術となっていること、などに対して警鐘を鳴らしている。

科学者と戦争、ということで言えば第二次世界大戦マンハッタン計画が真っ先に思い浮かぶ。オッペンハイマーノイマン、シラードのような、当時の天才たちが原爆製造に参加した。アインシュタインも計画に参加はしなかったが、ルーズベルト大統領に原爆製造を促す書簡に署名している。(後に生涯最大の過ちと語っている)

もちろん、当時ナチス・ドイツが原爆製造に着手していたということもあるだろう。しかし、結果としてそれはドイツではなく日本に使用された。その恐るべき威力のために後に核廃絶や平和活動に転じた科学者もいるが、強力な核兵器の政治利用に味をしめてから、多くの国が核兵器を製造するようになった。益川教授は、このような世界を作る一因となった科学者達の責任問題について問いかけている。

本書を読んで思い出したのは、グーグルやアップルのような企業が開発に注力して話題となっている人工知能だ。ホーキング博士らが人工知能の危険性を訴えているが、それでも研究は止まることなく進んでいる。「全ての人間は生まれつき知ることを欲する」というアリストテレスの言葉もあるが、科学者などはそうした知的好奇心が特に強いのだろうか?しかし、原爆や水爆のように、高度な技術が悪用された時の被害は計り知れない。益川教授も、科学技術が軍事目的に転用されるリスクについて述べている。そして、それを防ぐことは難しいとも。

だからこそ科学者達は社会や政治の動きなどにもっと目を向け、自分達の専門の枠を超えて行動を起こすべきであると主張している。益川教授は上記のような問題について今まで深く考えてこられたようだ。決して感情的に戦争反対を訴えているわけではなく、科学者らしく論理的に答えを出している。本書を読むと、現代の科学・社会・政治を取り巻く問題が分かり、大変勉強になる。

ちなみに、益川教授の恩師である坂田教授の名前がしばしば文中に出てくる。坂田教授は後進の若い科学者たちに向けて次のような言葉を残したそうだ。

「科学者である前に、人間たれ」

坂田教授のことは知らなかったが、知れば知るほど立派な人物だと感じる。ノーベル賞を取った科学者よりも、遥かに素晴らしいと言えるかもしれない。このような信念を持った科学者が日本に増えて欲しいと感じた。

 

余談だが、中学や高校の早い段階で文系 or 理系という風に区分けしてしまうことが、視野と思考の幅を狭めてしまうのではないかと思う。物理専攻の子が世界史を学び、歴史専攻の子が物理や化学を学ぶことに意味があると感じる。そのコラボレーションから新しい発見や発想が生まれてくるのではないだろうか。