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あるまじろの読書日記

「なぜ、本を読むんだい?」「そこに本があるからさ!」興味のあるテーマは歴史とサイエンス。アラサー。関東在住。文章力が低く時折エラそうな書き方になりますが、どうかご容赦ください。( ̄ー ̄;

化学の歴史

サイエンス 読書

             

個人的に好きな作家ベスト5に入るであろうアイザック・アシモフの化学本。化学という学問の歴史を振り返るにあたり、これほど素晴らしい本はなかなかないだろう。化学の思想と研究がどのようにして始まり、今日に至るのかがこの一冊で理解できる。化学を勉強している高校生が平行して読んでも面白いと思う。化学のこれまでの潮流が理解できるし、無味乾燥な教科書よりよほどためになる。

それほど化学に詳しくない初学者が読めるように平易な言葉で書かれているのがありがたい。途中で化学用語の意味を調べたりする必要もなくどんどん読んでいける。もちろん、これまで化学を学んできた人たちが読んでも楽しめるだろう。アシモフの本には発見の楽しみが多い。

化学の歴史は「この世界は何で構成されているのか?」という知的好奇心を抱いた人々によって始まった四大元素説を唱えたアリストテレスや、原子論を唱えたデモクリトスなど、古代ギリシャ人が中心である。個人的にはこうした古代ギリシャ人がどんな人たちだったのかについては、とても興味がある。彼らは、色々な現象の理屈を神様以外の所に求めた人たちなのだ。

彼らは日常に存在する(存在しない)様々なものに対して思考をめぐらせ、理論や法則を見つけようとした。化学に限らず多くの学問は彼らから始まっている。今では彼らの導き出した結論のほとんどは間違っていたことが証明されているが、それでも、彼らの業績は損なわれていないと思う。発見しようと試行錯誤したことに価値がある

中にはユークリッドアルキメデスピタゴラスのように今日に通じる法則を発見した者もいれば、エラトステネスのように地球の大きさを幾何学的方法でに導き出した者までいる。2000年以上前ということを考えると、驚きしかない。

しかし、あまりにも時代の先を行き過ぎたギリシャ人のために、化学の歴史は停滞したとも言える。長い間、古代ギリシャ人の思想をそのまま鵜呑みにして、なぞるだけの学者ばかりになってしまったのだ。天動説などもその例だろう。

そのため、化学では長くイスラム圏に遅れをとった。あまりイメージがないが、イスラム世界の化学への貢献は凄いらしい。alcohol(アルコール)、alkali(アルカリ)、そして化学を意味するchemicaもアラビア語由来とのこと。(「アル」というのがアラビア語の定冠詞らしく、調べたところ「アルゴリズム」もアラビア数学から来ているらしい!)

ギリシア時代の天才たちは理屈を重視したが、実験を重視していなかった。実験によって理論や法則を証明することは今では当然になっているが、そのような流れに変わったのはかなり最近のことらしい。ラヴォアジェのような、俗説を疑い安易に納得しない「変わり者」が出てきて化学はより厳密で現代的なものになった。

化学の歴史では錬金術の存在も見逃せない。今でこそ非科学的なイメージが定着しているが、当時は錬金術を大真面目に研究していた人もいたし、あのニュートンもこっそり研究していたというから驚きだ。卑金属から貴金属を作り出す動きは失敗したが、科学者(化学者)の評価は、結論が間違っていたからダメ、結論が正しかったから偉い、というものではないと感じる

錬金の試行錯誤の過程で生まれた実験道具や実験手法は今日にも活かされている。学校の理科や化学の教科書は正しい理論を作り上げた人たちばかりが載っているが、たまには間違っていた人達も載せてはどうだろう。化学の歴史を見ると、間違っていた人たちの努力も決してムダではなく、ちゃんと進歩に貢献していると分かる