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あるまじろの読書日記

「なぜ、本を読むんだい?」「そこに本があるからさ!」興味のあるテーマは歴史とサイエンス。アラサー。関東在住。文章力が低く時折エラそうな書き方になりますが、どうかご容赦ください。( ̄ー ̄;

海の都の物語

読書 歴史

              

ローマ人の物語』で有名な塩野七生さんの作。文庫版は6巻まである。

ヴェネチア共和国は7世紀末に成立してから、フランス革命で台頭したナポレオンに降伏するまで1000年以上に渡って繁栄したヴェネチアは今でも人口25万人程度の都市だが、以前はそれより少なかった。面積は佐渡の半分くらいの国(!)だ。こんな小国が1000年以上も続いた例は他にないだろう。

何故ヴェネチアがこれほど長続きしたのか。塩野さんも度々強調しているが、ヴェネチアは生き馬の目を抜く商人達の国だった。彼らは政治と外交をよく理解し、商業の重要性を理解していた。時代ごとの変化に柔軟に対応し、時には罵られ、苦境に立たされながらも力強く生き抜いてきた。シェイクスピアの有名な『ヴェニスの商人』に出てくる世界そのものだ。

小国はキレイゴトや正論だけでは生き抜くことができない。生き抜くためには「ずるい手」を用いなければならないこともある。誇り高く生きて滅びるか、地を這ってでも生き抜くか、ヴェネチア人が選んだのは後者の道だったヴェネチア人はプライドを捨てて実を取った。彼らにとっては生命線の地中海の海洋交易ルートを守り、富を蓄積する方法に知恵を絞った。

またヴェネチアでは文化と芸術も発展した。信教の自由があり、表現の自由があった。他のキリスト教国とは異なり異教徒とでも交易を行い、異端とされた書籍もヴェネチアでは読むことができた。文化や芸術の発展も当然である。同時に、特定のイデオロギーや思想に縛られず、限られた資源と人口の中で生き抜くための「本質」を追求してきた。そんな彼らの姿勢が、ヴェネチアの長い歴史を築いたと思う。

これほど長く存続したヴェネチアだが、カリスマ的英雄はほとんど存在しなかった。彼らは共同体の存続を第一に考え、僭主や独裁者の出現を決して許さなかった。カリスマや英雄に頼った国家は脆いものである。ヴェネチアの歴史を終わらせたナポレオンがいい例だ。彼らは政治もよく理解していたのである。

一方、正義と理想を掲げて滅びていった国はたくさんある。どちらが正しいのかは何とも言えないが、今よりもっと激動の時代を商人の知恵で生き抜いてきた人々がいたことは勉強になるだろう。覚悟を決めた人々の生命力はこんなにも強いのだ

本書とは全く関係がないが、ヴェネチアをモデルにした都市が舞台のARIAという漫画がある。ヴェネチアの雰囲気を知るのにとても良い。ヴェネチア共和国の時代に始まったお祭りや伝統行事が再現された場面も出てくる。普通に読んでも面白いが、イタリアやヴェネチアに興味がある人ならより楽しめる漫画だ。