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あるまじろの読書日記

「なぜ、本を読むんだい?」「そこに本があるからさ!」興味のあるテーマは歴史とサイエンス。アラサー。関東在住。文章力が低く時折エラそうな書き方になりますが、どうかご容赦ください。( ̄ー ̄;

ビッグデータ・ベースボール

読書

              

20年連続負け越しかつ金欠球団というハンデを抱えたメジャーリーグの球団、ピッツバーグ・パイレーツが、データ野球で強豪球団に生まれ変わった物語。

ここ数年のメジャーリーグにおけるデータ解析は1つのブレイクスルーを迎え、対象となるデータ量も分析の精度も昔とは比べ物にならないほど向上しているそうだ。それまであまり重視されてこなかった傾向や関係性を発見した野球データマニア、そしてデータに強い数学的素養を持った人間が、今各球団でひっぱりだこになっているという。金欠球団が強者に勝つ方法として、ビッグデータに注目したパイレーツのGMは有能だったと言うほかない。

もちろん、その道は決して平坦ではなく、フロントと現場との対立など問題を一つ一つ解決していく困難があったことは言うまでもない。パイレーツのGMはそのあたりの調整が上手で、そういう意味でも適役だったようだ。

本書の趣旨とは少し離れるが、日本のプロ野球メジャーリーグを比べてみたい。そこにはある決定的な違いがある。

次のデータは、過去にセリーグの各球団の監督を務めた人物である。それぞれさかのぼって5人ずつ。色で塗ってあるのはベストナインゴールデングラブ賞など、選手時代に何らかのタイトルを獲得した人である。(月間MVPなど単発記録は除いている)

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これを見れば分かるように、日本では監督経験者の大半が現役時代にタイトルを獲得していることが分かる。タイトルを獲得していない残りの4人にしても、選手時代はレギュラーとして数年以上活躍している。

では、メジャーリーグはどうか。球団数が多いので、ナショナルリーグの上位6チームについて調べてみた。着色してあるのは同じように現役時代に何らかのタイトルを獲得した人物だ。

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メジャーの監督には明らかにタイトル経験者が少ないことが分かる。パイレーツやアストロズに至っては、タイトル経験者がゼロである。ちなみに、※がついている人物はメジャーリーグ出場経験のない監督だ。つまり現役時代はマイナーリーグ止まりなどという人でも、メジャーの監督になっているのだ。

もちろんチーム数が全く違うので、単純比較には無理があるが、それでなくても現役時代の成績が全然パッとしない監督ばかりだ。これは「にわか野球ファン」が本書を読んでの個人的感想なので、寝言と思って聞いて欲しいのだが、要は「マネジメント能力」に対する考え方の違いなのだと思っている。端的に言えば

日本では、マネジメント能力は「選手としての実績」で判断される

アメリカでは、マネジメント能力は「マネジメントの実績」で判断される

ということなのだと思う。アメリカでは、選手としては二流三流の人が、マイナーリーグの監督やコーチとして実績を残してメジャーの監督に昇格していくケースが多い。メジャーで最優秀監督賞を最多4度受賞しているボビー・コックスやトニー・ラルーサも選手としては全然活躍していない。しかし、両者とも監督として野球殿堂入りを果たしている。

日本では、選手として二流三流だと失敗者とみなされてそのまま野球界から消えていくだろうどんな形であれ野球界に残れればいい方だ。

 

☆選手としてダメだったから、監督としてもダメだろう

(Aの仕事でダメだったから、Bの仕事でもダメだろう)

☆選手としてダメだったけど、監督としては有能かもしれない

(Aの仕事ではダメだったけど、Bの仕事では有能かもしれない)

 

この考え方の違いは相当大きい気がする。

アメリカでは、一度起業に失敗した人が違う分野で再チャレンジ起業するケースが結構あるようだ。日本ならば失敗者として白い目で見られそうだが、アメリカでは過去の失敗をむしろ経験値として評価するケースもあるそうだ。(もちろん失敗の中身によるだろうが)

人間の能力は経験や学習によって向上していくものだ。ましてや、一つの分野で二流三流だった人が他の分野でも二流三流とは限らない。逆も同じ。スティーブン・ホーキング博士は物理学者としては一流でも、感覚が独特すぎて教育者としては厳しいだろう。

何が言いたいかというと、人の能力を正当に評価しようとする文化。これがアメリカ社会の強みだと思う。フェアに評価してくれることが分かれば、人は向上しようと努力するからだ。年齢など能力と関係ないところでその人が判断されるのあれば、もう誰も努力しなくなるだろう。日本で埋もれた優秀な科学者たちが次々とアメリカを目指すのも分かる。どちらの社会が発展していくかは明白だ。

メジャーリーグの話から大分飛躍したが、こんなところからもアメリカと日本の違いが見えたような気がする。