あるまじろの読書日記

「なぜ、本を読むんだい?」「そこに本があるからさ!」興味のあるテーマは歴史とサイエンス。アラサー。関東在住。文章力が低く時折エラそうな書き方になりますが、どうかご容赦ください。( ̄ー ̄;

孫子

              

孫子は周知の通り中国最古にして、恐らく最も有名な兵法書である。

著者は春秋時代の呉に仕えていた将軍の孫武と言われているが、実際のところは分からないようだ。内容を精査していると、孫武の時代よりもっと後の時代の話が含まれており、孫武より後の時代の人が編集して現在知られている内容になった説が有力らしい。

孫子が現在まで語り継がれている理由の一つは、その内容が極めて普遍的だからである。例えば第一編は「戦争とは何か」という話から始まっている。彼は戦争は国家の大事であり、詭道(だますこと)と定義しているが、この考え方は戦争の形が変わった現代でも通用する。また、戦争をビジネスやスポーツに置き換えて応用されたりしているのも、内容が普遍的で役立つものだからと言えるだろう。

孫子は現実に基づいた合理的な内容だ。例えば「天運」とか「天命」という言葉が一切出てこない。これは時代を考えたら驚くべきことである。殷や周、春秋時代まじないや占いが盛んだった頃で、戦争の趨勢さえ天の声で決まると思われていた時代である。そんな時代に、孫子は戦争や軍隊、組織、人の動きを鋭く分析していたことになる。孫武科学的思考を持っていた将軍だったと思う。

それにしても、孫子が書かれたのは約2500年前紀元前500年くらい)の話である。日本はまだ縄文時代だし、ギリシャでもソクラテスプラトンは出てきていない。そんな時代にこれほど高度な書物を記していた事実に感動せざるを得ない。

後にヨーロッパでマキャベリの『君主論』(兵法書ではないが内容はかなり似ている)やクラウゼヴィッツの『戦争論』などが登場するが、それらと読み比べても全く古さを感じないし、内容でも全く見劣りしていない。時代が変わっても戦争や軍隊の本質、人の本質は変わっていない証拠だろう。今読んでも面白いのもそのためだ。

ちなみに、孫子の中で一番好きな下りはこれだ。色々な場面で応用できるのではないだろうか。

百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。(百戦百勝が最上ではなく、戦わずに相手を屈服させることが最上である)

 ちなみに中国の兵法書だと『三略』も面白く、読んでみる価値はある。