あるまじろの読書日記

「なぜ、本を読むんだい?」「そこに本があるからさ!」興味のあるテーマは歴史とサイエンス。アラサー。関東在住。文章力が低く時折エラそうな書き方になりますが、どうかご容赦ください。( ̄ー ̄;

史記(1)

              

これから何回かに分けて、司馬遷史記(徳間文庫)をレビューしていこうと思う。

史記は中国史全体で見ても、世界史全体で見てもとんでもない作品である。歴史書なんてつまらないのが普通だ。時の権力者に都合よく書かれたものだったり、王や王朝の事跡を淡々と連ねただけのものだったり、一般人が読んでいて楽しいものは少ない。しかし、史記は一般人が読んでも大変面白く、また勉強にもなる。

それは、司馬遷が形式にとらわれず、本質的な歴史と人物像を描こうとしていたからだ。例えば、戦国時代の楚の国に項羽という将軍がいる。彼は一時的に中国の支配者になったものの、皇帝ではなかったという理由で、後の歴史書では軽く扱われている人物だ。しかし、史記ではこの項羽の事跡について名君と同様に細かく記述している。さらに項羽司馬遷が仕えていた漢の仇敵なので、漢寄りの書き方になりそうなものだが、そんなこともない。ちゃんと司馬遷項羽の業績の良い所を認め、悪い所を批判している。客観的な視点から歴史の本質、より正確な人物像を記述しようという努力が伺える。さらには農民や商人のエピソードを、皇帝のエピソードと並べて記している。これもかなり凄い話で、権力のあるなしに関わらずちゃんと一人ひとりの「人間」を描いているのだ。だからこそ面白く、現代まで生き残ってきたと言えるだろう。

はっきり言って、人生で大切なことのほとんどは史記で学べると言っても言い過ぎではない。無人島に持っていきたい本を選べと言われたら、史記は必ず候補に入れる。それくらい価値の高い本だと個人的には思っている。

前置きが長くなってしまったが、1巻の感想。

1巻は古代~春秋時代までを記しているが、中でも印象が強いのは臥薪嘗胆(がしんしょうたん)のエピソードだ。臥薪嘗胆という言葉は現代でも使われることがあるので知っている人も多いと思う。大願成就のために困難に耐えるという意味で用いられる。何かで挫折したり、悔しい思いをした人が再起のために苦難に耐えるという場面は現実でもあるが、昔からそういう辛さを乗り越えて大願成就してきた人達はいたのだと教えてくれる。また、大願成就したからと言って油断していると、今度は逆にやり返されるということも教えてくれる。とても人間らしいエピソードなので、是非読んで欲しい。

春秋時代には、このように「耐えて大成した人」が非常に多い。春秋時代に覇者(当時最強の力を持つ人)と呼ばれた人達にも、若い頃に自国を追われたりして相当な苦労を経験してきた人や、老齢になってから大成した人もいる。

人の評価は若い内では決まらず、死ぬまで分からないということを史記は教えてくれる。