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あるまじろの読書日記

「なぜ、本を読むんだい?」「そこに本があるからさ!」興味のあるテーマは歴史とサイエンス。アラサー。関東在住。文章力が低く時折エラそうな書き方になりますが、どうかご容赦ください。( ̄ー ̄;

森の生活

        

ここのところ似たようなテーマの本を紹介しているが、これはその代表作。

日本人でヘンリー・D・ソローを知っている人はどれくらいいるだろうか。アメリカでは知らない人はいないほど有名な人物である。彼は1800年代アメリカ、ボストン近郊のコンコードという街に住んでいた。産業革命により目覚ましい発展を遂げていた成長期のアメリカにおいて物質史上主義の社会に異を唱え、自然的でシンプルな生活スタイルを説いた。

彼は実験的に2年半あまり街の郊外にあるウォールデン湖の近くに居を構えて自給自足的に暮らしたが、本書はその時の体験と彼の思想を綴ったものである。ソローはこの生活を通じて、6日働いて1日休むという当時の労働習慣を批判し、1日働いて6日休むという生活が可能なものであることを証明した。

ソローは贅沢な暮らしに対してとことん否定的だ。人生のほとんどを労働に捧げて、豪華な家や娯楽を手に入れても、それが何になるのかというのがソローの考えだった。人生の楽しみは自然や古典の中あると説き、多くの時間を自然探索や読書に費やした。こうしたソローの考え方は当時の人たちに大いに批判された。

しかし時が経ち、世界は労働時間削減の方向に向かっている。仕事=人生と本気で考えているのはタフに働く起業家くらいのもので、家族との時間や趣味の時間の確保など、ワークライフバランスの重要性が認識されている。(もちろん、途上国の貧困層はそうはいかないが)

フィンランド、オランダ、スイスなどではベーシック・インカムの導入が真剣に議論されており、実験も行われている。日本でもシンプルライフとかミニマリストという言葉が出てきたり、地方移住がブームになったりしている。ようやく時代がソローに追いついてきたとも感じる。

ただ、日本では未だにブラック企業や過労死の問題などが後を絶たないのも事実だ。

日本の労働至上主義信仰は根強いものがある。働き続けて死ぬ人生に何の意味があるのかと個人的には思うし、恐らく大多数の人もそう思ってるはずだが、強い集団意識によって抜け出しにくくなっているのは事実だろう。

東日本大震災当時僕は福島にいたが、震災当日の夜からコンビニやスーパーで「買い溜め」が流行った。一人暮らしの僕などは「そんなに買い込んで一体どうするの」と思ったし、実際のところかなり大げさな動きだったのだが、多くの人は計算してやっていたわけではなく、みんながやっているからやっていただけなのだ。先行きが見えない不安の中で、周囲の流れに遅れまいと動いていただけだったのだ。

日本人の多くが労働至上主義のパラダイムから抜け出せないのも、これと同じなのだと思う。みんな合理的に考えて働いているわけではなく、単純に不安なのだ。仕事を辞めてもすぐ食えなくなるわけではないが、不安だから働く。みんなが働いてるから働く。白い目で見られたくないから働く。まるで宗教のようなものだ。その不安心理をうまく利用して過酷な労働を強いているのがブラック企業だ。逆に、スペイン人などは失業中でも平気でサッカーの応援を楽しんでいるという。人生観が根本的に違うのだ。

しかしそれでも、今後は若者を中心に日本人の働き方が変わっていくのは間違いないと思う。そんな中でソローは、日本で今後大ブームを起こしそうな人の1人だ。彼は労働至上主義、物質至上主義に対して明確なNOを示し、その代わりとなる生き方を提示している。そう遠くない将来、間違いなく再評価される人物だと信じている。ソローの考え方は賛否両論あるのは間違いないが、仮に賛同できなくても社会の在り方を考える材料にはなると思う。